捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました

28話 竜の逆鱗(アレス視点)

     * * *



「かなり時間がかかってしまったな……」

 黒水晶を手に入れるため前人未到の秘境で幻獣キマイラを探していたが、残り一体がなかなか見つからなかった。
 お嬢様に依頼されてからすでに一週間が経っている。

 幻獣というくらいだから、まあ、出現率が低いのはわかってる。それを五個用意しろとは……今度から親父には自分で素材を用意してもらうことにしよう。そのせいで愛しいロザリアと離れ離れになっているのだ。
 一息つこうと泉に立ち寄ったところで、運のいいことに最後の一体を見つけた。

「はっ、これでようやくお嬢様の元に帰れるな」

 すぐに己の魔力を氷魔法に変換して手をかざす。ところが強大な魔力を察知したキマイラが空へと飛び上がった。

「それで逃げたつもりか」

 すぐさま風魔法を操ってキマイラを追いかける。正直いうと、空中戦の方が被害を気にしなくていいから戦いやすかった。一撃で片をつけるべく、さっきの三倍の魔力をこめて氷魔法を放った。

< 177 / 239 >

この作品をシェア

pagetop