捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「ギャオオオオオォォォ!!」

 パキパキと小気味いい音を立てて、キマイラが氷漬けになっていく。やがて重力に従って森の中へと落下していった。周囲の木々を巻き込みながら、激しい音を立てて地面に転がる。
 素材の採取をするなら氷魔法が最善だ。匂いもしないし後処理も楽だ。鮮度も維持できるので高濃度の魔力が詰まった黒水晶が手に入る。

「これでお嬢様の元に戻れる」

 やっと五個目の黒水晶を手にしたときだった。
 俺の魔法契約がなんの前触れもなく解除された。スレイド伯爵家で結んだ、ロザリアに忠誠を誓うための契約だ。これがあるとずっとロザリアと繋がっているみたいで嬉しかったのに、その繋がりが綺麗さっぱりなくなってしまった。

 解除できるのは契約したロザリアのみだ。ということは本人の意志であの契約を破棄したのか?

「何故……? 何か、あったのか……?」

 唐突に失われた絆にひどい虚無感を感じながらも、ロザリアがいるラクテウスの王城に戻った。



< 178 / 239 >

この作品をシェア

pagetop