捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「突然帰ってきて……ごめんなさい。実は離縁してきたの」
「「「は……!?」」」

 三人とも固まってしまったわ。お口が開きっぱなしになっているわね。
 ……ちょっと刺激が強かったみたい。

「お嬢様、まずはお茶でも飲みながらゆっくりお話ししたほうがよさそうです。すぐにご用意いたします」

 アレスの私の呼び方が婚姻前のものに戻っていて、本当に帰ってきたんだと実感した。家令のブレスが指示を出してメイドたちが準備に取りかかる。その横顔にはほんのりと笑顔が浮かんでいる。

 私の悪い噂もたくさん聞いているはずなのに、ここいる大切な人たちだけは私を受け入れてくれる。でも、だからこそ失いたくない。だからこそ私がこの場所にいてはいけないのだ。



 王城に移ってからのことをざっくりと順を追って話した。細かく話すとキリがないのと、三人とも青筋が浮かんで殺伐とした空気になったからだ。何より後ろに立つアレスから不穏な冷気が漂ってきて、彼にも相当我慢させていたのだと反省した。

「まあ、でも愚かな王子のおかげで姉上が帰ってきたなら万々歳ですね」
「そうなると王家での魔道具開発は尻すぼみになるだろうから、一波乱起きそうだな。手を打っておくか」
「それよりも今はゆっくり休んで、たくさん甘えなさい。ロザリア、よく頑張ったわね」

 心から心配してくれていた家族に告げるのは本当に心苦しいけど、私のせいで迷惑をかけたくない。だからこの伯爵家からも出て行くと言わなければ。

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