捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「……お父様、お母様、セシリオ。みんな大好きです。だから私はこれからひとりで生きていきます」
「なっ! 何故ですか、姉上!!」
「ロザリア……そんな、どうして……」
「…………ロザリア、気にするな。私がなんとかするから、ここにいていいんだ」

 お父様は大体の察しがついているようだ。でも、と私は言葉を続ける。

「婚姻中でさえ情報漏洩の危険があると接触を一切禁止されてきたのに、私がここに戻ってはどの様な言いがかりをつけられるかわかりません。私は国を出ます。そしてひとりで生きていきます」
「そんな……私は反対よ!」
「そうです、姉上! しかもひとりで生きていくなんて……!」
「そんなもの、それこそ魔法誓約書にしてしまえばどうにでもなるんだ。心配ないんだぞ」

 涙が出るほど温かい言葉に決心が揺らぎそうになる。でもここで甘えられない。甘えてはいけないのだ。

「いいえ、それだけでありません。圧力をかけられ領地経営に支障をきたせば、民まで路頭に迷います。私情で判断を誤ってはいけません」

 何より一番近くで王族のやり方を見てきた私にすれば、簡単に推測できることだ。ここでの滞在時間も多くは取れない。そろそろ出立しないとあらぬ疑いをかけられてしまう。

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