捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
「お嬢様の作る魔道具ならすぐに買い手がつくでしょう。必要なものをすぐに手配して参ります」
「ありがとう、あとでリストを作るわ。一階を店舗兼作業場にしたいのだけど問題ないかしら?」
「はい、もちろんでございます」

 不安がないと言ったら嘘になるけど、針のむしろだった城での生活に比べたらワクワクすることの方が多い。もともと窮屈な生活なんて性に合わなかったのだから。

「お嬢様、どんなことでも構わないので私を頼ってください」
「ふふ、ありがとう。でもひとりで生きていけるようにしないとダメじゃな——」
「いいえ」

 そう言って私の髪を掬い上げキスを落とす。

「何があってもお嬢様の傍を離れません。もっともっと私なしではいられないくらい、甘えてほしいのです」

 そう耳元で囁かれた。

 どうしましょう。
 うちの専属執事がグイグイ攻めてくるのだけど!?
 そんなうっとりしながら見つめないで! 耳に吐息をかけないで!!
 こう見えて色んな知識だけはあるのよ! 想像力だけは一人前なのよっ!?

「で、では、リストを作ってくるわっ! 明日の朝には渡すわねっ! おやすみなさいっ!!」

 それだけ早口で告げて自室に逃げ込んだ。
 想像以上の攻撃に早くも私の心臓が壊れそうだった。
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