捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 翌日の朝一番でファンク男爵がやってきた。
 魔道具開発の責任者として予算や開発進捗の管理、人員の管理まで任せている。きっちりと身なりを整えたファンク男爵は恭しく頭を下げた。

「ウィルバートの推薦で任命したが、研究者たちよりかなりの陳情が届いておる。どうなっているのだ?」
「そっ、それは……アイツらがまったく私の指示を聞かず、研究が進んでいないのです。おそらくは私が男爵であるゆえ下に見ているのでしょう。陛下、無礼を承知で申し上げますが、このままではまともに管理することもできませんっ! 男爵のままでは限界がございます!」
「では爵位を上げろと申すのか?」
「恐れながら、そうしていただければ問題なく管理ができると存じます」

 爵位を上げるのは簡単なことではない。納得できるだけの功績や実績がなければ、他の貴族から反発され、王家の地盤が危うくなるだけだ。

 何の理由もなしに爵位は上げられないが、魔道具研究の指導者であれば貢献度としては十分だ。爵位は上げすぎても波風が立つから、伯爵あたりが妥当なところか。

「ふむ、では伯爵に引き上げよう。あとは任せたぞ」
「はっ! ありがたく存じます! 誠心誠意務めさせていただきます!!」

 これで問題は片付くはずだった。



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