捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました
 しかしさらに二ヶ月が経っても陳情書は減るどころか増える一方だった。

「また来ておるのか?」
「はい、一向に減りません。もう少し詳しく調査が必要ではないでしょうか?」
「……わかった、研究所の所長を呼べ」

 その日の夕方に魔道具研究所の所長である、エンリケスがやってきた。
 かなり疲労困憊の様子で、顔色も悪い。今にも倒れそうだったのでソファーに座らせて話を聞いた。

「ロザリア様の時はこんなことなかったのですが……研究員たちも懸命にやってるんです。ですがファンク男し……あ、いや伯爵か。満足いただけないようなんです」

 詳しく聞けば、ロザリアの時には研究内容を発表するときには携わった研究者たちを連名にして、貢献度に応じた特別報酬も支払われていたそうだ。
 労働時間も多少の残業はあったが研究員が自主的に残っていたもので、特に負担になることもなく長期計画や中期計画に沿って進めていた。

 ところがファンク伯爵になってからは、まるで変わってしまったというのだ。

「研究成果の発表はすべてファンク伯爵の名前のみなので、特別報酬もありません。計画を無視して開発案をねじ込んでくるので残業も強制されて、一週間も帰れないことがあります。せめて仮眠室を設置してほしいと訴えても右から左で……すでに三分の一の研究者が退職しました」

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