幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「静かにしろ。」
ワイワイとうるさかった会議場が一気に静寂に包まれる。
国王を除いて軍のトップの地位にあるヴァルモーデン大将と
その次の位にある3人の中将が会議室に入ってきた。
ヴァルモーデン大将は高齢のために半ば引退状態にあるが、
その眼光はいまだに鋭く、目が合うと思わずたじろいでしまうほどだ。

ヴァルモーデン大将に代わって軍を動かしている
ラーデマッハー・ファルツ・ゲッティンゲンの3人の中将から、
それぞれが管轄している部隊の報告がされていく。
今年の方針や軍隊内での人事異動の情報共有がされた後、
最後の議題は新人隊員の配属発表だ。

新人隊員が配属される部のリーダーが1人ずつ呼ばれて、
新人隊員の詳細が記された資料が渡される。
ギュンターは自分の名前がなかなか呼ばれないので、
今年はてっきり騎士団に配属された新人はいないのかと思い始めていた。

「ギュンター・フォン・ロートシルト大佐」
ラーデマッハー中将がギュンターの名前を呼ぶ。
もう自分は呼ばれないものだと思っていたギュンターは
慌てて立ち上がる。
ラーデマッハー中将から渡されたリストには新人隊員3名の名前が記されていた。
(今年はうちには3人入るのか・・・)
席に戻って何気なくそのリストを見たギュンターは、
ギョッとして思わず2度見してしまった。
(ウチに女の子が入って来るのか??)
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