幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「そろそろ来る頃じゃないかと思ってましたよ、ロートシルト少将。」
黒縁眼鏡をかけて、いかにも頭の切れそうな顔した男が
部屋を訪ねてきたギュンターに声をかける。

ギュンターが訪ねたのはクララの実兄ラファエルだった。
ラファエルは地方駐在武官だったので今まで面識はなかったのだが、
配置換えで国王付きの護衛となり、王都に戻って来たのだ。
国王付きの護衛は軍隊でも出世コースの役職で、
いずれはラーデマッハー大将のようにこの男も軍の中枢を担っていくのだろう。
先日、ユリウスから紹介されて挨拶をしたばかりだった。

「そう言うってことは、もう大体察しがついているんだな。」
「私も割と敏感な方なので、妹の変化にはすぐ気が付きますよ。妹を悩ませているのが誰かってこともね。」
全てを見透かしたかのような物言いに、ギュンターは若干の苛立ちを覚える。
でもこの男を敵に回してはいけない。

「私がもたもたしているせいで、貴方の妹がどこかの誰かと結婚させられると聞いた。私はそれを阻止したいので、力を貸してほしい。」
「ファーレンハイト家のマルクス殿はクララにとって申し分ない相手だ。全く無関係の君が、なぜ邪魔するんだ?」
「それは・・・私がクララのことを愛しているからだ。私はクララを妻にしたいと思っている。」
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