幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「順番が逆になってしまいましたが・・・改めてお嬢様を私にください。」
翌日、朝一番でラーデマッハー大将の執務室を訪れたギュンターは
大将に深々と頭を下げた。

大将は一言も発することなく、沈黙が続く。
「沈黙は肯定と受け取ってもよろしいでしょうか。」
沈黙に耐えられなくなったギュンターは思わず尋ねた。
「・・・なんでもっと早く言わないんだ。クララに相手がいると知っていれば、クララの不興を買ってまでこんなことはしなかったのに。」
突然の恨み言にギュンターは面食らう。
(え、俺別の意味で大将に怒られてる?)
「私は生粋の軍人だ。政略結婚などという不確かなものは大嫌いだ。だから子どもたちにもそれを押し付けるつもりはない。望む相手がいるなら、そのものと一緒になればいいと思っている。だがな、」

ラーデマッハー大将はギュンターの胸ぐらをグイっと掴むと低い声ですごむ。
「娘を不幸にしたらその時は、私がお前の息の根を止めてやるからな。」
「クララを一生幸せにすると誓います。」
「その言葉忘れるなよ。」
ギュンターの力強い答えを聞いて、ラーデマッハー大将は胸ぐらを掴んでいた手を緩めた。
普段の強面からは想像できないが、家庭では子どもたちを愛する良き父親なのだろう。
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