幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「それで、君は今後どうするつもりなんだ?」
「クララとの結婚についてですか?」
「それもゆくゆくは話し合わなければいけないが、君は軍人としてのキャリアを続けるつもりか?君の家業は銀行家だろう。」

(あー、そういうことか。)
長らく実家とは距離を置いていたせいで、家を継ぐかどうかなんてすっかり忘れていた。
家を飛び出して以来、ほとんど交流がなかったにも関わらず、
ギュンターが国王の信頼を得ていて軍でもエリートコースを歩んでいると知った両親は
これを利用しない手はないと思ったのか
ギュンターへの態度を改めるようになっていた。
とは言ってもギュンターがほとんど家に帰らないので、
今も物理的な交流はほとんどない。

「他人様の家庭の事情に口を挟むべきではなないと思うが、そこに娘が嫁ぐとなると話は別だ。」
ラーデマッハー大将は顔の前で手を組んで、ギュンターを見つめる。
「私は軍人としての君を高く評価しているが、君が家業を継ぐというのなら止めはしない。」
「両親とはそれに関しての話はしておりません。クララと結婚するまでにはっきりさせます。」
「よろしく頼む。」

ラーデマッハー大将との話を終えて、ギュンターは自身の部屋に戻る。
実家に帰るなど考えるだけで気が重い話だが、やらなければならない。
< 72 / 97 >

この作品をシェア

pagetop