幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
「クララに提案があるんだけど。」
しばしの沈黙の後、ギュンターが口を開く。
「私にですか?」
「うん。実はまだ公にはなっていないんだけど、ユリウス国王陛下がユーフォルビアの王女を妃に迎えることになっている。」
ユリウス国王はクララより1歳年下で顔立ちが整っているため、
マグノリア中の女性の憧れの的だ。
「それはおめでたいお話ですね。」
「陛下は新しい王妃に護衛騎士をつけようとお考えで、私は君を推薦しようと思っているんだ。」

ギュンターからの突然の提案にクララは不安でいっぱいになる。
入団してから数年の自分に、王妃の護衛は荷が重すぎないだろうか。
とてもじゃないが自分に務まるようには思えない。
「あの・・・」
「王妃様はこの国に友達がいない。そんな状況でルイーザ様と対峙していかなければならない。王妃の護衛が女性であればあらぬ噂がたつことも無いし、何より君はシュヴァルツ公派の人間じゃない。私は君以上の適任はいないと考えている。」
ギュンターの言葉にクララはハッとした。
自分のことばかり考えていて、まるで王妃様のことを考えていなかった。
軍隊に入ったとき、王家に忠誠を誓ったではないか。
私の使命は、王家の皆様をお守りすることなのだ。
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