幸せを受け止めて~騎士団長は月夜に淑女をさらう~
マグノリア王国内でシュヴァルツ公は巨大な権力を握っていた。
シュヴァルツ公の領地で採掘される鉱山資源がこの国の経済を支えているからだ。
自らの商売でシュヴァルツ公の恩恵をお受けている者も少なくなく、
その影響力は国王でさえ無視できないものだった。

その点、ラーデマッハー家はシュヴァルツ公の影響を受けていない。
ラーデマッハー家の男子は代々軍人として王家に仕えてきており、
商売とは無縁だったからだ。
シュヴァルツ公の甥ゲッティンゲンが中将として軍での影響力を持っていたが、
クララの父も同等の地位にいるため、
ゲッティンゲンの顔色をうかがう必要がない。

それにクララ自身、シュヴァルツ公の娘ルイーザが大嫌いだった。
彼女のことは子どもの頃から知っていたが、
いつも取り巻きを連れて女王様のように威張り散らしていた。
「私は将来、ユリウス王太子と結婚して王妃になるの。」と吹聴していたものの、
結局は王妃にはなれず側室止まりだったことはいい気味だった。
(あんな意地悪女の好き勝手にはさせない。王妃様のことは私が守るのよ!)
やはりクララにも先祖代々の軍人の血が流れているのだろう、
王妃を守るという使命感がクララの情熱に火を点ける。

「ロートシルト団長、そのお話引き受けます。精一杯務めさせていただきます。」
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