捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 翌日はゆっくりと準備をして、午後からシトリン商会へ向かうことになった。
 ハイレット様もすっかり元気を取り戻し、朝食の時間にはいつものようにアレスと私の間に割り込んできた。平穏な時間はもう終わったようだった。

 宿屋の主人に獣人の番について尋ねてみると、他種族でも番になれるらしい。竜人と違うのは、獣人の番は互いに首の後ろを噛むことで成立するそうだ。
 相手は直感でいいと思った異性に決めるのだという。どうやら私でなければいけない理由はなさそうだ。

 街で昼食をとってからシトリン商会の店舗を訪れると、すぐさま昨日のリス族の店員が寄ってきて応接室へと案内された。
 応接室ではすでにクリフ商会長が待っており、三人掛けのソファーへ掛けるよう促される。私の両サイドにアレスとハイレット様が腰を下ろした。

「昨日は本当にすまなかった! 運命の女性に会ったのが初めてで、どうにも本能を抑えられず恥ずかしいところを見せたな。せっかく買い物に来てくれたのに、無礼な真似をして悪かった」

 そう言ってクリフ商会長は深々と頭を下げる。
 確かに昨日は驚き精神的に結構な疲労が溜まったけれど、その後アレスにこれでもかと甘やかされ、愛されたのでそこまでダメージは負っていない。

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