捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
「先日、シトリン商会長の屋敷に招かれ、歓待を受けた際のことです。私たちは別々の客室を用意され、晩餐の後はそれぞれの部屋で休んでいました。そこで私は薬を盛られ眠りに落ち、アレスは毒を盛られた上に暗殺者を送り込まれたのです」

 あちこちから「信じられない、相手は竜人だぞ……!」「まさか、そんな無謀な……」という声が上がる。私もアレスと結婚する前なら同じような反応をしていただろう。

「しかもご丁寧なことに魔力封じの手枷もつけられました。アレスにいたっては拘束の魔道具も使用されたのです。幸いにもその場で犯人を取り押さえることができました。それがそこにいる氷漬けの騎士たちです」

 その場にいる者たちが、氷漬けにされた騎士たちを不躾な眼差しで見つめた。中には俯いてぶるぶると震えている者もいる。きっと血縁関係か関係者なのだと察しがついた。

「ここに騎士団長はいますね?」

 しんと静まり返った謁見室は、ため息すらも聞こえそうだ。貴族や高官たちの視線の先にいる男性が、観念した様子で前に出てきた。

「はい……私が統括騎士団長です」
「隠密部隊というのは貴方の管轄ですか?」
「管轄ではありませんが人選はしておりました。隠密部隊は、その、皇帝陛下の直属となっておりますので」

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