捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 私はそこで、かつてないほどの窮地なのではと思い至る。もしかしたら、ここまでの旅の間もアレスなりに真剣にお役目に取り組んでいただけなのかもしれない。

「もちろんアレスとの間にかわいい子供はほしいけれど、そんなに焦らなくてもいいと思うの。アレスは旅の間もずっと頑張ってくれていたのよね?」
「……いや、あれは嫉妬に狂ってロザリアにマーキングしていただけだ。全力は出していない」
「嘘でしょう!?」

 あれだけ毎夜毎夜、明け方近くまで夫婦の営みをしていたのに!? あれで全力ではないなんて……!!

「ちゃんと新婚旅行になってから、全力を出そうと思っていた」
「つまり……」
「これからが本番ってところだな」

 そう言って妖艶な笑みを浮かべるアレスに抗う方法があったら、誰か教えてほしい。
 気が付けばベッドに逆戻りして、記憶が途切れてもなお愛を注がれた。

 アレスは今まで全力を出していなかったと、やっと理解した日だった。



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