捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
     * * *



 父上からの話も終わり、私とセラフィーナは私室に向かっていた。遅い時間の皇城内は、警備の騎士以外は誰もいない。静かな廊下にふたり分の足音がカツンカツンと響いている。
 セラフィーナは興奮冷めやらぬ状態で、頬を染めながら機嫌よく足を進めていた。

「はあ、夢みたいだわ……あんな理想通りの王子様がわたくしの夫になるなんて! お兄様もよかったわね、ずっとロザリア様のことを追いかけ回していたじゃない」
「言い方には気をつけろ。しかし父上が新書を送ったのに竜王がいっさい応じなかったせいで、面倒なことになったものだ」

 私がロザリアに初めて会ったのは、特使としてアステル王国を訪れた際だ。当時はロザリアが運営する魔道具開発研究所の視察のため、案内役も兼ねてロザリアが対応してくれたのだ。

 控えめな笑顔に、打てば響くような会話。見た目は派手ではないが顔形は整っており、聡明で機転が利くのはすぐにわかった。アステル王国に滞在している間で、私の中のロザリアの評価は劇的に上がった。
 あのレベルの女こそが、皇子であり将来皇帝となる私の伴侶にふさわしい。今の婚約者は見た目と家格のみで選ばれた女で面白くもなんともないし、すぐにでも捨てて惜しくないほど興味がなかった。
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