捨てられた妃 めでたく離縁が成立したので出ていったら、竜国の王太子からの溺愛が待っていました2
 しかしいくら私が帝国の皇子とはいえ、相手は王太子妃で魔道具開発の要だ。無理やり奪えば全面戦争になると、その時は自分の欲望を抑え込んだ。
 私が皇帝だったなら、すぐにでも戦争を仕掛けてロザリアを奪い去ったに違いない。幸いアステル王国の王太子は愛人に入れ上げていると情報が入っていたので、もしかしたらチャンスがあるかもしれないと考えた。

 (くすぶ)る想いを抱えて五年が過ぎていた。本当に長かった。
 これまでもロザリアよりもいい女には出会えていない。すべてを兼ね備えた最高の女は彼女しかいなかった。

「うふふ、明日のパーティーが楽しみね、お兄様」
「ああ、くれぐれも感情的になって癇癪(かんしゃく)を起こすなよ。セラフィーナが失敗すれば、私もロザリアと伴侶になれないのだからな」
「わかってるわ! まあ、見ててよ。これでも狙った男は、恋人がいようが婚約者がいようが、全員わたくしに惚れさせたんだから」

 セラフィーナの性格は正直言って面倒なだけだが、見た目だけは素晴らしいので騙される男が後を絶たなかった。そうやって手にした男たちを振り回し、飽きたら次の男を落としていたのだから手管はあるのだろう。
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