夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。


「や,おはよ」



呆然と立つ辛うじてサンダルを履いていた俺に,いつものニコニコとした顔が向けられる。

暗くていつもは良く分からなかった彼女のパーカーはグレーで,スカートは茶色を混ぜたようなピンクだった。

対比して,目の前のボサボサ頭の寝巻きを思い出す。

沸き上がってきた謎の感情に狼狽えていると



「おーい?」



そうぱちくりとした真ん丸の目が俺を捉えて,目の前で手を振った。

日中初めて会う彼女は,とても顔立ちの整った女の子で。

俺は思わず,息を呑んだ。

香りすらしてきそうなその距離に



「そう言えばなんでここに?」



冷静ぶったどこかの俺が顔を出し,尋ねてくれる。



「あーそれね。大変だったんだよ~,間違ったら恥ずかしいもん。でも,バスケットゴールの情報まで聞いてたのは正解だったな」



あの公園へ,俺がどの地域から来ているだとか。

家には何があるだとか。

そんなものを,まだ2人の時間になれない頃,確かに彼女へ話してしていた気がした。

それを覚えていて,わざわざ探しだしたと言うのだろうか。



「答えに,なってないよ」



勝手に来たり来なかったり,そしていきなりこんなところに現れたり。

それが嫌だなんて今さら思わないけど。



「逢いに来たんだよ」

「……俺に?」

「そう,君に」



いたずらに,彼女は笑う。



< 29 / 47 >

この作品をシェア

pagetop