夕日みたいな君と,時間を忘れて手を繋ぐ。
ねぇ,君には聞こえた?

突然入った私に驚いて,あってはいるけど,侵入者かと驚いた春陽くんの声。

男でも大人でも無い,知らない中高生の女が突然現れて,余程驚いたんだろうね。

目を真ん丸にして



『は? え? なに?!?』



って。

ちょっぴり申し訳なかったな。

ね,堤くん。

数日前にようやく初めて知った,あの男の子の名前の半分。

君はきっと困ってしまうから…

これは君には絶対に言えないことだけど。

寂しくて,寂しくて,泣きたいのに,泣けなくて。

そんな感情と眠気に目蓋を押されながら,とぼとぼとみっともない姿勢で歩いていた私は,あの日。

ぼんやりとした光りの中に,突然現れたように見えた君を見て。

運命と,喜びを感じたんだよ。

だから,どうしても放っておけなくて,つい声をかけちゃった。

それでね,話を強引に聞き出すうちに,思ったの。

君の星になるって,あの言葉は嘘じゃない。

君に私の全部をあげようと思った。

だから,君の心が泣き出したあの夜も必死に考えたよ。

君が出来るだけ早く,最も幸せになれる方法を。

びっくりさせちゃうかなって,思う気持ちもあったけど。

リスクを考えると,その大きさにとても怖くなったけど。

これはきっと,命すら賭けられる私だから,私だけに出来ることだから。

だけどやっぱり怖いみたい。

だからちゃんと,そこに(ドアの前)居てね。

< 33 / 47 >

この作品をシェア

pagetop