転生公爵令嬢のイチオシ!
私の緊張をほぐすように馬車の中でもレイ様は手を繋いでくれていた。

「…気に入ってもらえなかったらどうしよう」

ブツブツと同じことを繰り返し呟く私。

「そんなに緊張しないで。いつものメリィでいいんだよ」

「いつもの私?」

「うん。そうだよ」

レイ様は優しい瞳で微笑んでくれる。

「ほら!イチオシ堂の接客を思い出して!あの笑顔の芽衣ちゃんでいいんだから!」

「……それとこれとは、かなり違います…」

イチオシ堂のお仕事は大好きだったけど、同じような笑顔はできないわ…。

「私が隣にいるから」

レイ様!頼りにしてます!
私の未来のだ、だ、だ、旦那様は優しいんだから!
少し頬を染めてそんなことを考えてモジモジしていた。

「もうすぐだよ。ほら、見えてきた」

馬車の窓からストライブ侯爵家を教えてくれる。

「!!」

もう着いちゃうの!?
早くない!?
また緊張が戻ってきた!!

「落ち着いて、大丈夫だよ」

私がピキーンと固まってしまったので、私の肩をレイ様の方に抱き寄せてくれた。
ドキドキが、緊張が!!
どうしよう!!

そしてレイ様の顔を涙目で見上げる。

「レイ様ぁ…」

「…ッ!また!メリィあとで話をしようね」

「?」

苦しそうな声を出すレイ様。
そして馬車はストライブ侯爵家へと到着してしまった!!

立派なお屋敷だけど、見ている余裕がない!
レイ様がエスコートしてくれないと足が止まってしまう!

お屋敷の前にはズラリと人がたくさん並んでいる!
レイ様のご両親と屋敷で働く人々だろう。

笑顔で私に近づいて来てくれるご両親。
ひぇー!!ど、どうしよう!!
も、もう頭が真っ白!!

私は一気に挨拶をした!!

何を言ったのか自分でも分からない!
レイ様しか分からない日本語も話していたような気もする!!

「…………」

シーンと場が静まり返った……。

目を丸くして皆が私を見ている。
私は冷や汗が止まらない。

「まあ!まあ!まあ!本当になんて可愛らしいのかしら!ねぇ、あなた!」

「ああ、本当に!こんなに可愛い娘ができるなんて嬉しいよ」

緊張MAXで頭が真っ白になったあげくに挨拶を噛みまくり、何を話したのかもよく分からない。
大失敗し落ち込んでいた。

だけどご両親の反応で私は驚いている。
なぜか気に入っていただけたようである。

「!?!?!?」

「ね、平気だったでしょ?」

私の隣で苦笑しているレイ様。
どうして!?
私は失敗しちゃったのに、これで大丈夫だったの?

お屋敷で働く人達も優しい笑顔で私達を見ていた。
そしてお部屋に案内してくれた。


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