婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「うーん、やっぱりダメか」
「なぜそこで俺を選ぶのか、まったくもって意味がわかりません」
「アイザックが婚約者になれば、僕がラティといる時に皇女が来てもアイザックに向かうでしょう?」
「俺を弾除けにしないでください」
「ははっ、悪かったよ」

 でもアイザックには幸せになってもらいたいから、近々縁談を組むのもいいかもしれない。そんな僕の思考を読んだのか、アイザックが釘を刺してきた。

「フィルレス様。言っておきますが、まだ結婚するつもりはありませんよ」
「わかっているよ。まあ、そのうちね」

 アイザックと交わす他愛のない会話を終わらせて、僕は仕事を終えラティの待つ寝室へ向かう。



 護衛騎士しかいない廊下は、しんと静まり返っていた。

 まずはひとり。ラティに害をなす敵を排除しよう。
 ——絶望と屈辱にまみれて地獄へ堕ちればいい。


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