婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 短くため息をついたロイス様が、面倒そうに口を開く。

「なぜかわからないですか? そもそも王都の治安について真剣にご検討いただきましたか? 孤児院では不正や虐待が横行していませんでしたか? お茶会で、フィルレス殿下の名誉を守る発言をされましたか? ブリジット嬢はなにひとつラティシア様を上回る結果を出しておりません」
「そ……そんな、こと……聞いてない」

 ブリジット様は悔しそうに唇を噛んで、震えていた。

「確かにラティシアがどうやって試験をこなしたのか、僕にはなにも聞かなかったよね。それでどうやって認定試験に合格するつもりなのかと思っていたよ」

 フィル様の無情な言葉にブリジット様が噛みついた。

「それなら教えてくれればよかったではありませんか! どうしてなにも言わなかったのですか!?」
「なぜ僕が教える必要があるの? 僕はラティしか妻にしたくないんだよ。それでも勝ちたいならもっと頭を使わないといけないでしょう? それすらもできないなら、あきらめるしかないよね」

 口は動いているのに言葉が続かないのか、ブリジット様からの反論はなかった。わなわなと震えて、フィル様を睨みつけている。

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