婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「あの、フィル様。やはりこんな勢いで結婚するのはよくないかと思うのですが」
「いや、全会一致だからなにも問題ないよ。むしろここでサインしないと僕とラティの不仲を疑われて、側室の話が出てくる可能性があるね」
「……っ! わ、わかりました……サインします……」

 側室なんて受け入れられるわけがない。

 この独占欲が王妃としてダメなものだとわかっている。でも、フィル様を誰かと共有するなんて、どう考えても無理な話だ。

 これから私にやってくる未来を想像して手が震えたけれど、なんとか婚姻宣誓書へサインした。

「これで本当に僕のラティになったね」
「うう……王太子妃をすっ飛ばして王妃だなんて聞いてないです!」
「それはごめんね。でも、僕はラティ以外愛せないし、あきらめて」

 そんな殺し文句を言われて嬉しいと思ってしまった自分は、これからもフィル様の手のひらで転がされるのだと思った。


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