婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 グレイとシアンの気持ちもよくわかる。俺だってフィルレス様が結婚して幸せになるのを、心から祝福したい。フィルレス様に絶対の忠誠を誓うこいつらだって同じなのだ。

 どうにかしてやりたいと、結婚式の進行表を頭の中で振り返る。

「そうだな……結婚式の参列者に紛れるくらいなら、あるいは……」
「マジで!? それなら変化の魔法もかけたらばれないんじゃね?」
「でも結婚式は大聖堂だろ。あそこは結界が張ってあって魔法も魔道具も使えないないぞ」
「それじゃあ、絶対見つかるじゃん」
「まあ、見つかったら即行で逃げるんだな」

 不憫な同僚にできる範囲の協力はしてやろう。それにしても、我が主人の伴侶は人の心を惹きつけるお方だとつくづく思った。

 愛を知らなかったフィルレス様に惜しみなく愛を与え、ラティシア様はいつの間にか周りにいる者の心を掴んでしまう。

 優しさにあふれ、こんな俺にも気を配ってくださる。ラティシア様がいるだけでフィルレス様の心は平安だし、ラティシア様のためにより豊かで穏やかな国にしようとする。

 ラティシア様はこのヒューデント王国にとって、愛を注いで富をもたらす繁栄の女神に違いない。


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