婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 いつもならすぐに機嫌を取るような言葉が続いたが、この日からは周りの態度が手のひらを返したように冷たくなった。

「ええ、アルテミオ様にはもう関係のないことです」
「部屋に戻られた方がよろしいですよ。それより——」

 今まで私を褒め称え、認めていた臣下たちはまったく見向きしなくなり、侍従や教育係たちからも以前のような熱意は感じられない。父上と母上にも会えなくなり、寂しさと混乱ばかりで毎夜ベッドの上で泣いていた。

 そして、その理由はすぐにわかった。隔離塔から戻ってきた兄は十六歳になったら立太子すると発表されたからだ。その時、私はもう必要なくなったのだと理解した。

 それでも自分を認めてほしくて、努力を続けた。言葉遣いも丁寧に、一人称も「私」に変えて少しでも兄より優れているのだと示したかった。

 毎日毎日、朝から夜まで勉強も剣の鍛錬も頑張ったけど、聞こえてくるのは兄への賛辞ばかりだ。

 これだけ努力しても誰も見てくれない。どんなに頑張っても、兄がいる限り私は日の目を見ることがない。

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