婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
 難しい顔をしてフィル様は考え込んでいた。考え事の邪魔をしたくなくて私も静かに妃教育の本を読んでいる。十分ほどしてフィル様が口を開いた。

「ラティ」
「はい、なんでしょうか」
「どうも今回の敵は一筋縄ではいかないらしい。そこでひとつ提案なんだけど」

 フィル様はそこで言葉を区切って、私の腰に手を回して抱き寄せる。その行動の意味がわからなくて、されるがままになってしまった。

「毎食後ラティが口付けをしてくれる時に、毒を摂取していないか僕なりの方法で調べたいのだけどいいかな?」

 これは私がうっかり約束してしまったことだった。フィル様の妃教育の盗み見をやめさせるため、朝昼晩と愛の告白と私から口付けすることになってしまったのだ。

 つい口走ってしまい恥ずかしい思いをしながらも、日課としてこなしている。

「フィル様の方法ですか?」
「うん、フェンリルにも毒のチェックを頼んでいるけれど、それだけでは僕が不安なんだ」
「そうですよね……わかりました。お願いできますか?」

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