婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
第二章 大地の神が認めた乙女

6話 聖なる乙女

     * * *



 ラティの毒物チェックを日課にしてから一週間が経った。この日は朝から国議があり、王太子である僕も出席しなければならない。

 朝食後のラティとふたりきりで過ごす時間を削るのは本当に不本意だったけれど、これも役目だと断腸の思いで愛しい婚約者を治癒室へ預けてきた。他の男が近寄らないように牽制くらいしないと、とても安心できない。少しだけやりすぎたかと思ったけれど、恥ずかしさで固まったラティがかわいかったのでよしとしよう。

 会議室へ入ると、反対派の貴族たちはどことなくソワソワしていて表情が明るい。どうやらあちらにはいいニュースがあったようだ。
 ここで国王が議会の開始を宣言し、いつも通りの退屈な問答が始まった。

「本日の予定は以上であったが、実はこの場で発表したいことがある」

 国王の言葉で僕はわずかに眉をひそめた。断定的な物言いに嫌な予感がする。

「先日報告のあった聖女ブリジットが、フィルレスの婚約者候補として決定した。今後はラティシアとブリジットのどちらが将来の王太子妃にふさわしいか見極めることになる」

 婚約者候補ね——国王が明言したということは、聖女を使って主導権を取り戻せるとでも思ったのか?
 愚かだな。大人しくしていれば、もうしばらくこのままでいたのに。

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