婚約破棄された王太子を慰めたら、業務命令のふりした溺愛が始まりました。2
「王妃様の執務室ですか?」
「ええ、本日からは王妃様が直接ご指導されるとのことです。もともとラティシア様は基礎ができておりましたので、なにも問題ないでしょう」
「承知しました。では早速そちらへ向かいます」

 教師からそう言われ、私は王妃様の執務室を訪れた。話は通っていたらしく、護衛騎士はすんなりと通してくれる。

 執務室へ入ると正面の大きな窓を背にして王妃様がゆったりと椅子にかけ、隣にはフィル様と同じ色合いの青年、第二王子アルテミオ様が立っている。

 王妃様はフィル様とよく似た顔立ちだ。金色の豊かな髪を結い上げ、新緑の瞳は私をジッと見つめている。年齢を重ねても美しさを損なわない美貌は、貴族女性にとって羨望の対象だと聞く。

「直接話すのは初めてね。これからは貴女を教育することにしたわ。今後はわたくしの命令に従ってちょうだい」
「王妃様、お初にお目にかかります。ラティシア・カールセンでございます。今後はご指導ご鞭撻(べんたつ)のほどよろしくお願いいたします。アルテミオ殿下におかれましてもご挨拶申し上げます」

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