君が導き出してくれた私の世界
「楓くんが好き!」
気持ちをボールに込めて、楓くんに向かって大きく投げた。
ボールの行く先を見つめる。
コントロールが下手なパスを楓くんはしっかりと受け取ってくれた。
その瞬間、気付いた。
楓くんは、いつも私と向き合ってくれているんだって。
会話のキャッチボールができないにも関わらず、楓くんはずっと私に寄り添ってくれてるんだって。
「……っ……」
そう分かった途端、嬉しくて涙が溢れた。
「小春、おいで」
楓くんは両手を広げてくれて、私は彼の元へ駆け出した。
いつの間にかボールは地面についていて、その代わり私を抱きしめてくれる。
泣きながら楓くんの胸に顔を埋めると、伝わってくる速い鼓動。
「小春、好きだ。大好きだ」
楓くんは私の背中にまわしている手に力を込める。
私も楓くんを抱きしめた。
「楓くん、私も大好きだよ」
幸せな涙とこの溢れ出る気持ちは止まることを知らない。
これから先、どんな壁が待ち受けようと、きっと、君と一緒なら乗り越えていける。