君が導き出してくれた私の世界
「はーい、みなさん! 席に着いて下さーい! ホームルームを始めます」
変わったことといえば、担任の先生が女性になったこと。
去年、担任だった難波先生が私が場面緘黙症であることを伝えてくれたのか、話せない私を見ては変に思われることはなかった。
それに、お母さんが先生と直接会って私の対応について説明してくれたおかげで、話すまでに時間がかかる私を急かさず待っていてくれる。
私は、たくさんの人たちに支えられて今の私がいる。
高2になりたての頃は、学校で1人ぼっちで話せないことでいじめに遭ったり、先生や両親から場面緘黙症のこと理解されず、何度も“消えたい”と思っていた。
でも、楓くんと出会ってこの世界は温かいことを知った。
今では、“生まれてきて良かった”と思えるようになった。
それに、私には夢ができた。
臨床心理士になって、私と同じように場面緘黙症で苦しんでいる人たちや障害や心の傷を抱えている人たちの力になりたい。
そう思えるようになったのは、やっぱり楓くんの存在が大きい。
ーー『小春は凄いな。人の痛みに気付いて寄り添うことができるなんて』
楓くんが私の長所を見つけてくれたから。
感謝してもしきれない思いでいっぱいだ。