ダイエット中だけど甘い恋を食べてもいいですか?
澤乃井さんは腕を組んで少し考え込んだあと、隣に座る私の顔を覗き込んだ。

「俺が付いていってやるよ。」

「・・・え?・・・それはどういう・・・?」

「だから、俺が彼氏のフリをして君に付いていくってこと。」

「彼氏の・・・フリ?」

「ああ。芽衣に男がいれば、勇吾君の彼女だって、勇吾君と芽衣の仲を邪推する必要がなくなるだろ?」

「あっ・・・なるほど。でも・・・澤乃井さんにそんなくだらないこと頼むの申し訳ないです。」

私がそう言って両手を振ると、澤乃井さんはその手をギュッと掴んだ。

「くだらなくなんかない。俺なら芽衣に少しでも嫌な思いをさせたくないって思う。」

「・・・あ、ありがとうございます。」

私は思いがけない澤乃井さんの熱量のある言葉を浴びて、頬が赤くなった。

「それと、芽衣にお願いがあるんだけど。」

澤乃井さんが私の手を握りしめたまま、私の目を見た。

「はい。」

「俺のこと、(ひびき)って呼んで。」

「え・・・?でも」

「勇吾君のお願いは聞いて、俺のお願いは聞いてくれないの?」

澤乃井さんが眩しいものを見るような瞳で、私をじっとみつめた。

そんな顔でそんなこと言うなんてずるい。

そんなの・・・断れるわけないよ。

「わかりました。響さん。」

私がそう言って微笑むと、響さんも嬉しそうにやっと笑った。
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