結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
復讐14

「ねぇ柚香。結婚するとき、俺達の気持ちはちゃんと確かめ合って結婚したよね? お互い、生涯を共にしようと気持ちを確かめ合って結婚したよね? 」
「…はい…」
「確かにあの時の俺は、憎しみしかなくて同じことを言っていても今とは違う気持ちだったと思う。でも今は、憎しみじゃなくてその気持ちが愛に変わったんだ。生涯一緒にいるという気持ちは、あの時も今も変わらない。ただ、その中にあった気持ちが憎しみじゃなくて愛に変わった。それだけだよ。だから、離婚なんてしたくないんだ」
「…貴方の気持ちはよく判ります。でも…私はこのまま貴方と結婚生活を続けることはできません。…自分で、自分が許せませんから…」
「許せないなら、許さなくていいじゃないか」
 
 ギュッと唇を嚙んで柚香は黙ってしまった…。

「俺だって、自分の事が許せない。悲しみから逃げる為にずっと、人のせいにして生きてきたんだから。…それでも、柚香を愛する気持ちは止められないから…」

 ギュッと鞄を握りしめた柚香…。

「あら? 貴方はあの時の! 」

 声がして聖が振り向くと、小さな赤ちゃんを抱いているまだ20代後半くらいの女性が立っていた。

「こんばんは、覚えていますか? 駅前で破水して、一緒に救急車に乗って頂いて。その時、出産しちゃって病院まで一緒に来てもらったのですが」

 聖はじっと女性を見ていると、柚香が倒れた時に病院へ向かうとき破水した女性を助けた事を思い出した。
 一緒に救急車に乗ったのは流れで乗ってしまったが、まさか出産に立ち会ってしまうとは思っておらず。
 でも、生まれたての赤ちゃんを見て何か聖の気持ちに光が差してきたように思えた。
 病院についてそのまま病室へ運ばれた、母親と赤ちゃんを見送って柚香の病室へ行った聖は、柚香が生きていてくれてよかったと心から思えたことを思い出した。
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