結婚は復讐の為だった…いつのまにか? …
すると…。
少し離れた場所に誰かが立っていた。
携帯電話を見つめてギュッと握りしめている姿を見て、聖は思うより先に体が動き出した。
コツン…コツン…。
携帯電話を握りしめ、俯いているのは女性…。
聖の足音にハッとなり顔を上げた女性は…柚香だった。
ちょっとほっそりとしたような柚香は、綺麗に髪を整えちょっとゆったりした茶色いワンピースを着ていた。
「…柚香…」
聖が声をかけると、柚香は驚いた顔を向けた。
目と目が合うと聖の目が潤んできた…。
「柚香…ごめん…」
スッと頭を下げた聖。
「俺が勝手に勘違いして、お前の事を犯人だと決めつけて。結婚してくれたのに、ずっと酷い事ばかりしてきた。許してもらえるなんて思っていない。…それでも…お前の事を愛する気持ちが押さえられなくて…。離婚を言い出されたって、俺に文句は言えない事も分かっているのに…」
柚香は何も答えずただ俯いていた。
「離婚はしたくない。…柚香をずっと、愛しているから。この先もずっと、柚香の事を幸せにしたい。…どんな柚香でも、俺は全部許すから…」
俯いていた柚香がフラッと倒れそうになった。
「あ! 」
スッと駆け寄った聖が柚香を抱きとめた。
「大丈夫か? どこか、具合が悪いのか? 」
そう尋ねられると、柚香は何か言いずらそうな顔を浮かべた。
「もしかして、前に倒れた時からどこか悪いのか? 」
柚香はそっと首を振った…。
「…ごめんなさい。何でもありません…」
そっと聖を突き放した柚香。
「貴方のお気持ちは嬉しいのですが、私の意思は変わりません。…このまま離婚して下さい。お願いします…」
答える柚香の声はあまり力がないように感じた。
疲れているのか、どこか具合が悪いのか暗い場所でハッキリ判らないが見える首元を見ていてもかなり痩せているように見える。