俺がこの世で一番愛してる人
一目惚れした人

「兄ちゃん一人か?」

 今日は飲みたい気分だったので一人で飲んでいると、オリバーと名乗る男がそう話しかけてきた。

 そいつは既に相当飲んでるのか酒臭かった。
 面倒くさそうなので適当にあしらおうと思ったが、男は聞いてもいないのにペラペラと話し始める。


「俺の家には世にも珍しい人型の妖精がいるんだ。昔死にかけてるそいつを拾ったんだけどな、すごいべっぴんに育ってよぉ。出来心でそいつのことを殴ったら、綺麗な顔を歪ませて、これまたいい声で鳴くんだ」


 すごく胸糞が悪い。
 そうやって簡単に暴力を振るうのも、それを楽しそうに話しているのも、何もかもが気持ち悪い。

 こういう奴が心底嫌いだ。

 できれば関わりたくないが、こんな奴のところにいたら、そのうちその妖精は殺されてしまうかもしれない。
 なんとかして保護してやりたい。

 そうと決めたら、早速行動に移そう。


「その妖精俺も興味あるんだけど、見に行っていいか?」

「あぁ? しょうがねぇな。そんなに興味あるってなら見せてやるよ。ついでに、うちでも飲もうぜ」

「ああ、そうしよう」


 少し興味をある素振りをすると、オリバーは楽しそうにニヤリと笑う。

 何がそんなに楽しいのか俺には理解できないが、それを表情に出さないよう努める。
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