となりの席の読めない羽生くん
(はにゅうはづき…なんか…ちょっと韻踏んでる感…)
葉月は結婚した場合の名前を想像してみた。

「荻田に大事なこと言っとくけどさ。」

「…大事なこと?」

「俺の名前…」
「晃一?」
「ちがう。上の名前。」
「え?はにゅうくん…?」
羽生(はにゅう)って書いて羽生(にわ)だから。」 

「……………え?」

羽生(にわ) 晃一(こういち)

「嘘でしょ…?」

「本当。」

「え、だって先生とかも“はにゅう”って言ってない?」
「誰かが“はにゅう”って読んだのを面倒で訂正しなかったらそのまま定着した。」
「一年の時からずっとってことー?」
「うん。」

葉月は羽生の胸の中で肩を震わせて笑った。
「そんなことあるー?」

葉月が笑って顔を上げると、そのまま羽生は葉月の顔を捕らえてキスをした。

「かわいい」

葉月はまた頬を赤らめた。

「…ニワ…くん、て…なんか言い慣れないから変な感じ…」
「晃一って呼べば?」
「晃一?」
「葉月」
「…なんか耳がくすぐったい。」
葉月ははにかんだ笑顔を見せた。

翌朝
「おはよう、羽生(はにゅう)く…あ…」
朝食の会場で葉月が言った。
「…ごめん、癖で。」

「べつにいいよ。荻田さん。」
羽生はわざとらしく丁寧に葉月を呼ぶと、葉月の耳に唇を近づけて囁いた。

「のこりの夏休みで慣れさせるから。」

羽生がいつもの不敵な笑みを浮かべた。
葉月は耳まで赤くなりながら、のこりの夏休みとそれから先のことを想像した。

(なんか全然…予想がつかない…)

葉月は困ったように笑った。
楽しそうな予感だけ信じることにした。



fin.
< 73 / 73 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:38

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

冷徹エリート御曹司の独占欲に火がついて最愛妻になりました
  • 書籍化作品
[原題]チクタク時計ワニと雪解けの魔法

総文字数/95,303

恋愛(オフィスラブ)136ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
*第6回ベリーズカフェ恋愛小説大賞にて優秀賞をいただきました* こちらは改稿&番外編追加にて書籍が発売となります。 WEB版はあっさりめですが書籍版は甘めなシーン増量しております。 ウエディングドレスをめぐるお気に入りの番外編が書けたのでぜひお読みいただけるとうれしいです。茉白が絵が下手な理由とか、Sな遙斗とのラブなシーンなどなど。 初めて書いた長編でしたので改稿前は拙い部分も多いですが…こちらはこちらでお楽しみいただけますと幸いです。 (書籍版はたくさんの方の手を借りてグレードアップしております) *** ◆真嶋 茉白 28歳◆ 雑貨メーカー・株式会社LOSKAの企画営業職で、社長の娘でもある。 誰よりもLOSKAが好きで、将来的には父の跡を継ぐつもりでいる。 絵が下手。 ◆雪村 遙斗 34歳◆ アパレルやコスメなどの店舗を展開する大手企業・シャルドンエトワールグループの専務で社長の息子。 雑貨部門のたて直しのため、雑貨部門バイヤーになった。 厳しい目で取引先を見ている。 ◆米良 33歳◆ 遙斗の秘書。 有能で優しいが、遙斗にだけは少しいじわる。 ◆塩沢 莉子 26歳◆ 茉白の後輩。 人懐っこくて素直。 トレンドに詳しく、茉白にとってはSNSの師匠。 ◆影沼 匡近 36歳◆ コスメメーカー・株式会社Amselの常務。 パーティーで茉白と知り合い、LOSKAに近づいてくる。
表紙を見る 表紙を閉じる
別れた夫婦の苦くて甘いやり直し物語。 *本編終了後に番外編があります* ◆藤村 水惟◆ 30歳。グラフィックデザイナー。 広告代理店大手の深端グラフィックスを辞め、現在はリバースデザインで働いている。 ◆深山 蒼士◆ 34歳。 深端グラフィックスの社長の息子で営業部長。 水惟の元夫。 ◆生川 洸◆ 42歳。グラフィックデザイナー。 リバースデザイン代表で、人気・実力ともにトップクラス。 *** チャマさん *素敵なレビューありがとうございました*
Little yellow flowers

総文字数/54,143

恋愛(オフィスラブ)71ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
名前からはじまる、文具デザイナーの恋のお話

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop