彼女の夫 【番外編】あり
「うわーーー、すごいね。もう全部揃ってる・・」

新居に到着し、各部屋を見て回った後に彼女が言った。
今はリビングの窓からバルコニーに出て、夜風にあたっている。

「だろ? 俺、結構頑張ったんだぞ」

「ん? 頑張ったのは・・玲生さんじゃないと思うけどな~」

「アハハ。確かに、俺は指示して支払いしただけだ」


バルコニーから、彼女が勤務する病院が見えていた。
通りの道も街灯が整備されていて、夜道も明るい。

「蒼、あの病院、外国人の患者がかなり増えて忙しいらしいよ」

「そうなの? それなら私も、少しは出番あるかな」

「いやぁ、少しどころじゃないと思うぞ。蒼は腕もいいし人柄もいいし、親父のお墨付きだからな」

ふふ、と彼女は微笑み、俺に視線を向けた。

今夜から、俺たちはずっと一緒にいられる。
ようやく・・。

「玲生さん」

「んー?」

「初めて会った日から、ずーっと心の中に玲生さんがいた。
ロサンゼルスにいた時も、海を見ながら、夜空を眺めながら、玲生さんどうしてるかな・・って。
いつかまた、もしかしたら運命が交差して、会える日が来たらいいなと思ってたけど、こんなふうに一緒にいられる日が来るなんてね。

私も、玲生さんを愛しています。
本当に、心から」


迂闊にも、涙が溢れた。
ひと粒だけ。


「・・大好き、玲生さん」

俺に抱きついた彼女に、それは見えただろうか。




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