彼女の夫 【番外編】あり
パーティー会場を出たところのロビーで、編集者と待ち合わせた。

ホテルのバンケットで開催されていたこともあり、そのまま上階のバーに行きカウンターに並ぶ。


飲み物が運ばれてきたところで、俺は口を開いた。

「話・・って何ですか?」

「・・・・少し、飲んでいいですか?」

俺が頷くと、編集者はカラン、とロックアイスの音を立ててグラスを空にすると、すぐに同じものをオーダーした。

「服部社長、その後ご結婚は?」

「・・ご存知の通りですよ」

「恋人や婚約者は?」

「残念ながら」

ゆっくりとグラスを傾ける俺とは対照的に、編集者は早いペースでアルコールを喉に送り込んでいた。

「坂本さん・・何かあったんですか?」

そう尋ねると、編集者はカウンターにグラスを置いた。

「俺は・・自分が上手くいかなかった腹いせに、ふたりを・・」

「えっ」


腹いせ?
ふたりを?


編集者は俯いて何かを考えているようだったけれど、一気に2杯目のグラスを傾けて空にする。

「ちょっ・・坂本さん、そんな無茶な飲み方をしたらいけませんよ」

「・・・・あなたは、俺を恨んでないんですか?」

「え、恨む? なぜ私が坂本さんを?」

俺が恨まれることはあっても、俺が編集者を恨むとはどういうことだ?

訳が分からず、酔いが回ってきた編集者を俺は見つめていた。

バーテンダーに冷たい水を出してもらい、編集者に勧める。
諦めたような笑みを見せ、編集者はグラスを受け取った。


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