悪役令嬢に転生したのですが推しのイケオジ騎士様(モブキャラ)と恋に落ちるルートはどれですか!?
3 寝耳に水、泣きっ面に溺愛

結末を知っているから

「ち、違いますっ!」

 ブラン様の横に駆け寄った。
 近くに寄れば、昨日抱えられた時と同じ彼の香りを感じて、それだけで溢れる想いに潰されそうになる。

「じゃあ、何だ? 本気だというのもおかしな話だろ。『一目惚れしました』ってか? はっはっは、若いっていうのはいいねえ」

 まるで私など相手にしないかのように、ブラン様は垂れた前髪を片手でおおきく搔き上げ笑った。

「一目惚れなんかじゃ……」

 言いかけて、言葉に詰まった。
 何年も、何年もブラン様が好きだった。けれど、それは前世の私だ。
 前世でもずっと好きでした、だなんて、現実主義者の彼はまず信じない。

 悔しい気持ちと好きな気持ちと、色々な感情が溢れて、我慢していた涙が勝手にこぼれた。
 ブラン様は、そんな私の頭に優しく大きな手を置いた。

「ありがとな。でも、お嬢ちゃんは決められた相手がいるだろう。叶わない恋は、するもんじゃないさ」

 その言葉が、胸に響く。

 本当は私はレオンとは結ばれないと、訴えられたらいいのに。
 そんなことを言っても、彼はきっとまた笑うだけだ。

 扉の向こうから、笑い声と足音が聞こえて、ブラン様は私の頭から手を離した。
 その瞬間、扉がガラリと開いた。

 レオンが、ガブリエル王子と談笑しながら歩いてくる。
 レオンが私に気づいてこちらに駆け寄る。彼の方をちらりと見てしまったのは、失敗だった。

「エレーナ? どうして泣いているんだい?」

 レオンが心配そうに、私の顔を覗き込んだ。
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