悪役令嬢に転生したのですが推しのイケオジ騎士様(モブキャラ)と恋に落ちるルートはどれですか!?
「エレーナ、私は君が好きだ。愛している。望むのなら、何度でも伝える」

 レオンの腕の中、頷けないでいる私にレオンは真剣な瞳を向ける。

 それ以上言われたら、苦しくて、胸がはち切れそうだ。
 一刻も早くレオンの腕から逃げ出したい。
 レオンには、私じゃなくてマリーを見ていて欲しい。
 私はレオンとの幸せな未来は築けないのだから、早くブランの元に行きたい。

 ――皆で幸せな結末を迎えたいなんて、ワガママなのかな?

 零れそうな涙をなんとか堪えて押し黙っていると、レオンはかすかに瞳を揺らした。

「前世の記憶というものを、私は超えられないのかい?」

「え……?」

 彼の言葉に、前世の私の姿を思い描く。
 ブラン様だけを見つめていた私。ブラン様だけを推し、ブラン様に会うためだけにゲームをし、ブラン様を感じるためだけに執念を燃やし人生を使っていた私。

 記憶の中の私の瞳に、レオンなど入る余地は無かった。
 だから、リベルテ王国一行が来校するまで、ここがゲームの世界だと気づかなかったのだ。

「幼い頃から婚約者として、相思相愛だと思っていたのだが、私の思い違いだったのかい?」

 違わない。
 だって、今だって、私はレオンを欲している。
 でも、欲してはいけないんだ。
 私は、悪役令嬢になる女だから。

 何も言えずに黙りこくっていると、レオンの瞳にかすかに炎が灯った。

「エレーナ。君が決められないなら、私たちが決める」

「え……?」

 戸惑いの声を漏らすと、レオンは私を抱きしめていた腕を解いた。
 思わず見上げると、その青く澄んだ瞳が闘志に燃えている。

「ブラン殿に決闘を申し込む」
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