ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
そばで聞いていたディオンとベアトリスも心を打たれてしまったのか、それぞれあらぬ方向を向き、感極まったような面持ちで目頭を押さえていた。
(なんて言ったらいいのか、わかんないけど……)
「……ね、リュカ。リュカは、かっこいいよ?」
迷ったあげく、ルイーズは握りしめられたリュカの手を上から覆って告げた。
戸惑ったように潤んで揺れる瞳をまっすぐに見つめて続ける。
「だって〝自分はこうしたい〟ってはっきり言えるのは、リュカがたくさん悩んで、たくさん考えてきたからだよね」
「っ、ルゥ」
「ちっともできそこないなんかじゃないよ、リュカ。ルゥにはちゃんと、リュカが〝王子さま〟に見えるもん」
ルイーズも自分で決めて、父であるグウェナエルの封印を解くために旅を出た。
けれど、そうして決断できたのは、ルイーズに前世の記憶があったから。
──普通の五歳児以上の精神を持っていたからである。
リュカは決してそうではない。恐れながらも尊敬する父のエヴラールの役に立ちたくて、追いつきたくて、子どもなりに必死に考えていた。
そんなふうに王子であろうとする努力を、いったいだれが否定できようか。
「ルゥも一緒に考えるから。なにかできることがないか、探してみよ?」
「っ……いいの? ぼくのことなのに」
「リュカのことだからだよ。だって、お友だちだもん」
ね?と、ルイーズは微笑んで首を傾げてみせる。
それを間近で受け止めたリュカは、なぜかほんのり頬を赤くしてコクッと頷いた。
「ありがとう、ルゥ」