ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「っ……王じゃ、なくなる」
「ずっと、だれなんだろうって思ってた。でも、グウェナエルさまを父上は〝陛下〟って呼んでたから、すぐに気づいたよ。それで城の図書室で調べたら、グウェナエルさまが〝大魔王〟で、魔界の王だったことがわかって……」
ルイーズはぽかんとしながらリュカを凝視する。
(……待って。リュカって、じつはすんごく頭いい?)
普通の六歳は、こんなふうに疑問に思ったことを自ら調べたりするだろうか。
わからないのなら、ただひとこと、大人に聞けば済むことだ。それをわざわざ自分から調べに行くなんて、ルイーズからしてみればありえない。
しかも、この抜群の理解力。
──ともすれば、前世の記憶持ちのルイーズにも匹敵するのでは。
「だから、父上はもしかしたら、もうすぐ〝魔王〟じゃなくなるのかもしれない。そしたら、ぼくも王子じゃなくなるでしょ?」
「えっ!? あ、え、そうなの?」
「うん。だから、なんていうか……ぼくが王子でいられるうちに、民のためになにかしたくて。父上みたいに、かっこよく。ぼくはできそこないだけど、一回くらいは〝王子〟として胸を張ってみたいんだ」
切実に紡がれる思いには、長いこと悩んで考えてきたからこその熱が感じられた。
きっとルイーズがここに来る前から、リュカのなかにはその思いが強くあったのだろう。だからこそ、タイムリミットが迫っていると感じられるいま、焦っている。
(いい子……リュカ、いい子だ……)
ルイーズは胸がじんとして、つい泣きそうになってしまう。