ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~

「しかし、危険はないのか? 魔界とは悪魔の棲む地だろう」

 ルエアーラ産の花々から抽出した特製のハーブティーを注ぎながら、ベアトリスが心配そうに口を開いた。

「危険がないとは言いませんが、少なくとも人里に降りるよりは魔界に渡った方が安全かと。無論、グウェンさまの存在ありきですけどね」

 しれっと答えたディオンに、グウェナエルは苦笑しながら肩を竦める。

「ま、対悪魔戦ならば俺としても対処はしやすいからな。人相手でなければいくらでもやりようはあるし、そもそも魔界は全土、俺の庭のようなものだ」

「……人ではダメだと?」

 疑問符を浮かべるベアトリスに対し、グウェナエルは胡乱気なため息を返した。

「人と悪魔の間には、古より数多もの掟が定められているだろう」

「教会が取り仕切っているアレですか」

「ああ。人界と魔界の天秤が平衡に保たれるよう互いの世界への干渉は許さぬ、とかな。人と悪魔が結ばれてはならぬというのも、掟により定められたものだ」

 ルイーズは、以前母から教えられた〝約束事〟について思い出した。

 人と悪魔の間に交わされている掟。これは双方における〝絶対〟であり、対立する二つの世界を繋ぎ、そして切り離すための楔なのだという。

 反故にした場合、破った者にはさまざまな制裁が待っているそうだ。

(……そうだ。ママとパパは、掟に背いたから引き裂かれちゃったんだよね)

 掟とは、長い年月をかけて作り上げてきた世界の秩序そのもの。

 ゆえに、これらが破綻しないよう掟の違反者に罰を執行する者たちがいる。

 それがふたつの世界の狭間に作られた〝リグアーナ教会〟だ。
< 69 / 193 >

この作品をシェア

pagetop