ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「……わかった。じゃあ、これで我慢する」
「姫さま……」
「ディー、これ〝きゃらめりぜ〟して」
「っ、はい。お任せください!」
ルイーズの要望にすぐさま首肯したディオンは、闇魔法で指先に炎を灯した。
弱すぎず強すぎない絶妙な火加減でシードル花蜜の表面を炙っていくと、芳醇な焦げの匂いと共に、カリッとした黄金の膜ができあがる。
「ほう。なんだこれは、見事だな」
やり取りを見守っていたグウェナエルは、初めて目にする光景だったのか、興味深そうに身を乗り出して覗き込んできた。
「きゃらめりぜ、っていうんだよ。表面を溶かして、カリカリにするの」
「姫さま考案なんですよ! 誠に姫さまはすばらしい閃きをお持ちなのです」
絶妙なタイミングでキャラメリゼを終えたディオンは、どこかドヤ顔である。
(パンケーキもキャラメリゼも、前の世界であっただけなんだけど……)
この世界では〝あるもの〟と〝ないもの〟の基準がわからないので、ルイーズは意図せず『閃きの天才』扱いをされて困ってしまう。
とはいえ、グウェナエルが興味を示してくれるのは純粋に嬉しい。
「パパ、食べる?」
フォークに刺した一口パンケーキを目の前に差し出せば、グウェナエルは「いいのか?」と虚を衝かれたように双眸を瞬かせた。
「うん。パパ、あーん」
「あーん、か」
さすがにそれには苦笑しながらも、グウェナエルはキャラメリゼされた贅沢パンケーキに食いついた。カリ、と小さな咀嚼音が響いて、ルイーズはそわそわする。
「どう?」
「……ん、甘いな。だが、わずかな焦げがいい味を出している。食感もさまざまで飽きないし、これは美味い」
「!! でしょでしょ」
予想以上の食レポが返ってきて驚きながらも、ルイーズは破顔した。
そんな娘の様子になにを思ったのか、グウェナエルは額を抑えて天を仰ぐ。
「……いかん。うちの娘がかわいすぎる」
「パパ?」
「いや……冷めないうちに食え。ひと休憩したら、魔界へ飛ぶからな」
小声で紡がれた言葉は聞き取れなかったが、ルイーズは素直に頷いた。