ちびっこ聖女は悪魔姫~禁忌の子ですが、魔王パパと過保護従者に愛されすぎて困ってます!?~
「──契約成立だ。これでおまえたちは、正式に主従の関係になったぞ」
「え、もうおわり?」
「ああ。これは俺が大切に保管しておこう」
ルイーズが呆気なさに驚いていると、グウェナエルは誓約書を手に取って指を鳴らした。その瞬間ぱっと消えてしまった誓約書に、続けて面食らう。
(やっぱり四次元ポケット……ドラ○もん……)
闇魔法はつっこみどころが満載だ。いちいち驚いていたらきりがないし、もうそういうものなのだと軽く流すのが正解かもしれない。
「じゃあ、これからもよろしくね。おねえさん」
「はい、こちらこそ。……それよりも、どうかベティとお呼びください。主から『おねえさん』と呼ばれるのは、少々距離があるようで寂しいですから」
「ベティ? わかった」
ディオンのこともディーと呼んでいるし、たしかにそちらの方が親しみは湧く。
素直に了承すると、ベアトリスは心底嬉しそうに相好を崩した。
「わたしも、ルイーズさまを姫さまとお呼びしても?」
「いいけど……ディーがそう呼んでるから?」
「それもありますが、わたしにとってはお仕えする姫君ですからね。心からの親しみを込めて、そう呼ばせていただけたらと」
「そっか。わかった」
ディオンがルイーズを〝姫さま〟と呼んでいるのは、おそらく大魔王グウェナエルの息女だからだが、従者で共通ならばわかりやすくていいかもしれない。
(……そいえばディー、なんか静か?)
どうしたのだろう、とルイーズが振り返ると、ディオンははらはらと涙を流しながらこちらを見守っていた。せっかくの美麗な顔が悲惨なことになっている。
「どしたの」