1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい
「そう……?」
彼女は悲しそうに笑った。
「私の家は…、温かくなんてないよ。私は、愛してもらえていないよ……。きみと、…同じだよ」
怯えているような、悲しそうな、不安そうな言葉を聞いた途端、目を見開いた。
そう、だったの…?太陽のように温かくて優しい笑顔をしていた君は、きっと愛されているんだろうなと思った。勝手にそう思い込んでいた。
でも、違ったんだ。その優しさに紛れ込んでいて、見えていなかった彼女の辛い日常。
「俺と、同じ……」
そんなことはない、と思った。
「君は強くて、優しいよ…。俺にはないものを沢山もっている」
俺がそう言ったら、彼女は顔を歪めながら、嬉しそうに、悲しそうにありがとう、と呟いた。彼女は一度大きく肩で息をしてから、家の扉を開けた。俺は深呼吸して、家に入った。
家の中は暗く、冷たかった。ここに入ったことも住んだこともない俺にも、この空間がとても息苦しいものだということに気づいた。
そして彼女は、廊下の一番奥の部屋へと進んでいく。俺もその後に続いた。彼女が、扉を開けた。そこには────、
ビールの缶やワインの瓶が歩ける隙間もないほどに散らばっていた。彼女の母は、俺の母にとても似ていた。ソファにもたれて、放心状態のようだ。
「おかあさん……」
俺と話している時の彼女の声なんかじゃなかった。怯えているような、か細い声だった。彼女に呼ばれた女の人はゆっくりとこちらを振り向いた。その人の瞳に光はなかった。
「……」
その人は何も言わない。ただそこに存在しているだけのような人形に見えた。