1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい


 彼女と俺の環境、そして境遇はとても似ているけれど、全く違う。悲しみの大きさも寂しさの大きさも違う。


「おかあさん……、ちゃんとご飯……」

「うるさいわよ……。あんたに関係ないでしょ!もうあっちに行ってよ…。あんたなんか消えればいいのに…!あんたなんか生まれてこなければ……!」


 彼女の瞳孔が大きく見開いた。そこから一粒の涙が流れ落ちる。

 俺は反射的に彼女の手を強く握った。大丈夫、大丈夫というように。そうでないと君の心は俺の心のように死んでしまうと思ったから。彼女が俺の方をゆっくりと振り返った。そして、


「大丈夫だよ」


 強がって笑った君の瞳から2度目の涙が流れ落ちた。


「こういうの、慣れてるから……」


 だめだよ、そんなことに慣れたりなんかしちゃ……。

 思わず、そう言いたかった。だけど、寸前のところで耐えた。こんな言葉を俺が言って、一体何になるというのか。もうこんなことにさえ慣れてしまった俺の言葉に、何の意味があるというのか。

 君は本当に強い。でも、君は本当は俺よりも弱いのだろう……。まだ出会って間もないけれど、幼いながらに心からそう思った。慣れている、なんてそんな訳ないのに…。

 人は苦しい時、どうしようもなく誰かに助けを求めたい時、どうしようもなく悲しい時、……笑うんだ───。でもそれはただの強がりで、大丈夫なんかじゃないことくらい、俺にだって分かっている。

 母に見捨てられたことはとても辛い。でも俺は彼女のようには強がることが出来ない。だからこそ、側にいたい。これも神が与えた試練なのだと、その時誓ったんだ。

 『君を助ける。君を支えられるような人間になる。いつか君を傷つけるものが現れるのなら、そういうものから君を守れる人間になる』と。

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