1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい


 それは嘘でもあるけれど、本当のことだろう。


「そうか……」


 アルベスさんは静かに呟いた。それから私たちに真っ直ぐな眼差しを向けた。そして───


「タラニス、君は強くなりなさい」


 こう告げた。


「ローマ帝国の騎士団の聖騎士長となり、愛する人を自分の身で、全身全霊をかけて守れる者になりなさい」


 マリアは思わず、息を呑んだ。タラニスはもう、俯いてはいなかった。その瞳には、灯が強く強く光っていた。

 アルベスさんは、私たちをこの家に住ませてくれた。そして私はいつしかアルベスさんに自分の父の面影を重ねていくようになった。

 優しくて、強くて、情熱がある。アルベスさんの息子にも会った。息子さんはアレッサンドロという名前の人だった。タラニスの父がローランドだったと聞いた時、彼は泣いた。とても勇敢でどんなに強い人間でも、声を上げて泣くことがあるということを、私はその時に知った。


***


 それから数日が経って、タラニスはアレッサンドロさんと共に家を去って行った。私が最後に見た彼の背中はもう弱くはなかった。

 その背中は何もかもを背負って、私のために強くなろうとする私の盾のように見えた。


「いつかまた君に会いに行く。強くなって帰って来るから、……その時まで待っていて」


 タラニスが去る前に、私に向けて言ってくれた言葉。タラニスは優しく笑って、私を抱き締めた。とても強い力で、私を締め付けた。でもそれは彼の心の痛みだと分かっているから、私も彼を優しい強い力で抱き締める。

 窓から差し込む太陽の光が、私たちを優しく包み込んでくれているようだった。

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