1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい
「蒼佑、私を見つけ出してくれて、ありがとう」
「羽琉、俺を好きになってくれて、ありがとう」
そう言って、お互いに唇を合わせた。初めてのキスは笑顔と幸せいっぱいの優しいキスだった。
2人の物語は、ここで終わり。
ではなく……。
「ねぇ、蒼佑。話を聞いてて疑問に思ったことが1つあるんだけど…」
「何?」
「蒼佑は15歳になったら死んで、生まれ変わるを繰り返すんだよね?でも今、蒼佑はまだ生きてる。それは、どうして?」
「ああ、確かにそうだね。……んー、神様は100万回生きた俺に少しだけご褒美をくれたんじゃないのかな」
「ご褒美?」
「うん、ご褒美。きっと俺はこれからずっと、羽琉と一緒に生きていける。羽琉と俺がおばあちゃんおじいちゃんになるまでずっと」
「死ぬまで?」
「ははっ、うん。もちろん」
神様はきっと、100万回目の俺の人生で、羽琉が側にいる今世で区切りをつけてくれたのだろう、と蒼佑は付け足した。
その言葉に、羽琉の顔が嬉しそうに歪んだ。
「それってプロポーズみたいだね」
「ははっ、そうだな」
2人はそんな話をしながら、歩き出した。
2人がこれから歩む道は、神様からの祝福の光には照らされていなかった。でも、もう迷わない。2人一緒なら、例え道がなくとも歩いていける。
光に照らされていないのなら、その光を自分たちで照らしていけるように切り開いていけばいい。
ちょっと前までは考えることさえ出来なかったことだ。
タラニスとマリアの2人の運命は決して幸せなものではなかったかもしれない。父は死に、母は酒に溺れ、しまいには見捨てられた。それでも2人は強く生きた。
そのことが、2人が今、こうして胸を張って生きることが出来る何よりの証だろう。そして、幸せになれた何よりの証拠だろう。
2人の背中は暖かな太陽に照らされて、前に進んでいた。
マリアは1500万年間、あの場所でタラニスを待ち続けていた────。
『1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい』【完】