1500万年後のあの場所で君とまた出会いたい


 蒼佑は100万回の輪廻を繰り返し、羽琉は記憶が消えてもなお、姿を変えて側に居続けた。

 100万回生まれて消えて死んでを繰り返していなかった羽琉は、1500万年間蒼佑の側に存在していた。そんな優しい真実に2人は顔を合わせて笑い合った。


「「あははははっ」」


 その弾けるような笑い声は、いつかの小さい頃の笑い声と重なった。


「タラニス。100万回、生きてくれてありがとう」

「マリア。1500万年間、俺の隣にいてくれてありがとう」


 蒼佑はそう言って、優しく笑った。その笑顔はタラニスの笑顔と同じ優しいものだった。本当はずっと、自分の隣にマリアという存在がいたという真実に、蒼佑は泣きそうになった。それでも、どうにかして泣きそうになるのを堪える。


「羽琉、今度さ、俺たちが生まれた所に行ってみないか」


 それは古代ローマの都市、クサンテン。今はどんな国名のどんな世界なのだろう。覚えていなくとも、自分の生まれた場所を見てみたい気持ちが羽琉にはあった。


「うん、行こう」


 1500万という命を貫いて、タラニスはやっと、天罰を受け終えた。

 それは彼の強さであり、マリアを想う優しい気持ちがあったからこそ貫き通せたことなのだろう。


「もっと色んな場所を蒼佑と一緒に見てみたい。タラニスとマリアの話をしながら」


 蒼佑は嬉しそうに笑って、頷いた。

 ここから、始まる。

 本当の意味でやっと、2人は出会うことが出来たのだろう。


「タラニス、大好きだよ」

「マリア、俺も大好きだ」


 冗談混じりの羽琉の告白は、いとも簡単に真剣なものとなった。こんな幸せが自分にあるのだということを蒼佑に出会っていなければ知ることが出来なかった。今もずっと自分の殻に閉じ籠もって、世界を見ようとしなかった。

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